理事長の藤本が大学生の時、ボランティア活動で障害のある子どもたちと出会い、ご家族の大変さに衝撃を受け、みなさんが困っている時にすぐに助けに駆けつけられる仕事がしたい、と思った。しかし、当時の日本社会にそのような仕事は存在しなかった。そして、家族が倒れると次の日にはどこか遠くの施設へ行ってしまう彼らとの突然の別れに、何度も涙を流し、誰も遠くへ行かなくていい社会になって欲しいと願った。

 大学を卒業した年、北欧ですでに根づいていたというグループホームを、東京都の育成会が初めて開設したと聞いて、見学した。団地の住居で4人の女性が暮らされていた。自分にもいつかこんなことができるだろうかと思った。この国がまだ大型の入所施設全盛だった頃のことである。

 あれからちょうど40年。24時間年中無休の支援で、家族に訪れた幾多の危機を共に乗り越えてきて、今、35人の重度障害の方が入居するグループホームを実現した。

 ご家族にどれだけの苦労があったか、私たちはよく知っている。そのみなさまの今までの労をねぎらい、グループホームで暮らすのは困難と世間で言われる重度障害のお子様たちが、今、ホームで穏やかに暮らし、立派に自立されたことを祝う会を10月4日にパレスホテル大宮にて、開催させていただいた。

「子を人に預けることに罪悪感があったが、初めて自分の時間が持てた。人に頼っていいんだとわかった」

 これまでの想い出を語っていただいたご家族のスピーチは、ひとつひとつが涙を誘う言葉だった。

 自分の夢は、ねがいの杜に出会った人だけが救われることではない。日本中、全ての障害者家族が、出会った事業者に生涯を支えられて、将来のことは何も心配することはない、と思える社会になること。「出会った子どもに生涯寄り添う」このねがいモデルを、全国のスタンダートにして欲しい。